Sola cubeは今から17年前の2006年に誕生しました。
その当時、私は広告制作の仕事をしていました。仕事を通して、クライアントの期待に応えたり、課題解決をしていく喜びや達成感を得ていましたが、一方で悶々とした満たされない表現欲求の塊を常に心に抱えていました。
何者でもない自分が、自分にしかできない「モノづくりをしたい」、というメラメラした気持ちであったような気がします。どんなモノづくりをしたいかは当初はぼんやりしていましたが、
1 直接手に取って感じられるリアルなモノ。
2 五感を触発し人の心を覚醒させるモノ。
3 自分自身が心の底から良いと確信できるモノ。
という達成したいテーマのようなものがありました。そんな中で、モノづくりのヒントを求めてアンテナを張っていた際に出会ったのがモミジバフウの木の実です。モミジバフウは街路樹や公園で植栽されている木で、言わば「どこにでも落ちている木の実」。
でも、このまるでウィルスのような放射状の造形の魅力にスッと引き込まれ、「自然界にはこんなにも美しいものが当たり前のように存在するのか?」と驚愕したのを今でもはっきりと覚えています。
それと同時に、自然界が何億年もかけて作り上げたこの美しさに叶うモノなど、自分には到底つくりようがないという圧倒的敗北感に打ちのめされたのです。畏敬の念という言葉がその時の感情を言い得ているように思います。
私の中の強い表現欲求はすっと消え、「自己表現はあきらめる」という境地に至りました。そして、自然界にひれ伏して、黒子としてこの植物の美しさを伝えていこうという使命感へと意識が徐々に切り替わっていったのです。
そこからSola cubeというプロダクトに至るまではあっという間でした。できるだけシンプルにこの造形の魅力を伝えるために、キューブ状の樹脂に封入するというアイデアを考案し、東急ハンズで買った樹脂封入キットで、夜な夜な試作を重ねていきます。
第一号の試作が出来た時に「あ、これはいけそう」という感覚がありました。そんな試行錯誤を経て、4cmの透明キューブの中に、植物の木の実や種、花を封入するというSola cubeの基本モジュールが生まれたのです。
今でこそ明確な機能がないプロダクトは受け入れられる土壌があるように思いますが、当時の周囲の反応は「なんだかよくわからない」という反応がほとんど。
それでも自分自身の感覚を信じ、100人に1人くらいは共感してくれるに違いない!と、Sola cubeの製品化及び、ブランドサイト公開に向けて準備を進めていったのです。