2006年の誕生から数年かけて、Sola cubeを取り扱ってくださる店舗が少しずつ増えていきます。5年後の2011年には副業として続けることに限界を感じ、また10年間勤続したというキリの良いタイミングでもあり、勤めていた広告会社を退職。Sola cubeと真正面から向き合って生きていくために、独立して開業することにしました。
Sola cubeの直営店を作ろうと、事業を始める場所として選んだのは生まれ故郷であった京都でした。
私の先祖は京都で代々、宮大工を営んできたのですが、曽祖父に当たる吉村富三郎が昭和14年(1939年)に自身の弟子のために建築した町家が空き家で、そこを店舗にしようと計画し、動き始めたのです。
Sola cubeが「植物の美しいかたち」がコンセプトなので、それを伝えるための器として、「自然の造形美を伝えるお店」にすることにしました。
分類学の父と言われる18世紀のスウェーデンの博物学者リンネは、自然を植物界、動物界、鉱物界の三界に分類しており、自然の造形美を伝えるお店として、「植物・動物・鉱物」の魅力を伝える自然史博物館のような空間にしようと決めたのです。
店名はウサギノネドコ。
ヒカゲノカズラという植物の古くからの呼び名から命名しました。呼び名の由来はさだかではありませんが、フワフワした感触のヒカゲノカズラを、兎にとっての居心地のよい住空間と見立てたのではないかと思われます。
「私たちの小さなお店も、お客様にとっての居心地のよい空間を目指したい」
そんな思いで「ウサギノネドコ」という名前をつけました。また奥に細長い京町家が「うなぎの寝床」と言われており、それを文字っているようで面白いと思ったことも店名の決定に至った理由の一つです。
様々な紆余曲折を経て、前職を退職してから1年半後の、2012年9月13日にウサギノネドコ京都店はオープンします。
開店してから1週間以上、ほとんど来店はありませんでした。近隣の方はさぞかし得体の知れないお店ができたと、いぶかしく思ったことでしょう。(漢方薬屋と間違って入店された方もいました)
初めてのお客様は、ご近所にお住まいの男性。Sola cubeのことをインターネットでご覧になっていたようで、実物をご覧になりたいとご来店され、センニチコウのSola cubeをお買い上げになっていきました。この瞬間の喜びと興奮は一生忘れることはないでしょう。
ほとんどの人に見向きもされなくても、熱狂的に喜んでくれる人のハートをがっちり鷲掴みしたい。「100人のうち、たった1人でいいから熱狂的なファンをつくるんだ」という思いを胸にウサギノネドコの事業は、こうして小さく小さくスタートしました。
次回の「Sola cubeの誕生からこれまで(06)」はSola cubeや、ウサギノネドコが手掛けてきた商品について振り返りたいと思います。