Sola cubeが誕生した同時期、アンテナに強く引っかかっていたことに1934年にニューヨークの近代美術館で行われた「MACHINE ART」展があります。
ベアリングやプロペラなど、アメリカ合衆国の大量生産時代に工業目的に作られた部品や製品にスポットを当て、そこに美を見出すという展示です。今でこそプロダクトデザインの展示は珍しくありませんが、当時のニューヨークでは「部品…これのどこがアートなの…?」と困惑と共に受け止められ、大変に物議を醸した展示だったようです。
私はこのMACHINE ARTの展示がとても好きで、ニューヨークの近代美術館に訪問する度にMACHINE ARTのアーカイブ展示を真っ先に観に行きます(好きすぎて過去3回訪問しています!)。いつも「いいなぁ、いいなぁ」と食いつくようにこの展示を見ていました。
工業部品と、植物の造形には、共通する触発力があると私は感じています。その共通点は一言で言うと「機能美」。つまり「機能を突き詰めた結果、目的を達するに一番合理的な造形美」ではないかと思うのです。
最も効率よく風を起こすプロペラや、機械の回転を円滑にするためのベアリングなど、工業部品の造形には目的を達成するための機能的合理性がありますが、実は植物の造形にも同様のことが言えます。
植物は根を張って生きているため、動物のように自ら積極的に動くことができません。だからこそ周囲の様々な自然の力を駆使して、自らの子孫を可能な限り、広く、多く残すという道を選んでいます。そのための最適な取捨選択を植物が行った結果、今の造形に至っていると考えることができます。
例えばタンポポ。
セイヨウタンポポという種だと150-200個ほどのパラシュート状の種のついた綿毛を放射状につけます。360度放射状につけるからこそ、こんなにも限られた小さな空間に、互いのパラシュートを干渉させることなくつけることができるんですね。
そして風に乗ってできるだけ遠くに飛ばすための絶好の機を狙うのですが、綿毛が一番よく飛ぶのは太陽が上がって、地面が温められて上昇気流が発生した時。まだ冷え込んでいる朝や夜、雨の日には、綿毛が遠くに飛びません。そのため写真のようにパラシュートを畳んでいるのです。
びっくりするほどよくできた造形と機能ですよね?タンポポの綿毛だけを切り出しても、まだまだ語り足りない「機能美」が詰まっています。
このような美しく機能的な造形を見ると、生命誕生から38億年という果てしなく長い時間をかけて、突き詰めていった結果としての植物に私は惹かれているんだとつくづく感じます。
植物の持つ「機能美」への興味関心は、その後、2013年に行った「自然の造形美展」へと繋がっていきます。次回の「Sola cubeの誕生からこれまで(04)」は「自然の造形美展」について執筆したいと思います。