Sola cubeとの出会いは、12年以上前に遡る。
ある日ネットで偶然出会ったのがディスプレイ越しの「タンポポのSola cube」。
「ふわふわ in 透明」という飛び切り魅力的なプロダクト。ひっそり一人でデザインを生業にしはじめたばかりの僕にとってこのプロダクトを考え商品化して世に送り出した作り手に勝手にジェラシーすら感じたのでした。
それから時が流れ、元同僚である仲のよい友人が結婚することになった。さて何を贈ろうかと考えたときに真っ先に思い出したのがSola cubeだった。同業のその彼ならきっとこのプロダクトに驚き、喜んでくれるに違いない!と思ったのでした。
ただそこで悩ましい問題が。アクリルに封入された個体はもちろん自然物。ということは当然個体差がある。それであるならば僕が実物を見て二人にふさわしい個体のSola cubeを贈りたくなる。ただ京都に住む僕に東京に行く用事もなく、困った。。
やっぱり全く違うものにしようかとも思い探してみたのだけどやっぱり諦めきれない。そこで、もしかしたらネット検索のワードが理由で見つからなかっただけで、実際に商品が見れるお店が意外に近場の関西圏にあるんじゃないかと考え、当時あったSola cube公式サイトから問合せしてみることに。まもなくメールで返信があった。
驚いたことに僕の拠点である京都で今まさにお店を作られている最中で、吉村さんも東京から京都に既に移住されていることが発覚。それだけでも相当な縁を感じたのだけれど、その場所は当時僕が住んでいたところから自転車で5分くらい、何なら歩いて行ける程の超ご近所さん。そして極めつけはその最初のお返事には、ご近所なので手元にあるSola cube在庫を全部持ってそちらまで伺いましょうか?と書いてある。もう近くの取り扱い店どころか実際の商品と何よりジェラシーさえ感じた作り手ご本人も来ていただけるとは、もうほんとミラクル。当時僕は賃貸住宅の内装をほぼDIYで改装して住みながら仕事をしていた。ただ外観は全く手を付けておらずなんの変哲もない古い住まいだったので、ご本人に来ていただくのはちょっと恥ずかしいなあと思いつつ、もちろん来ていただくことに。
約束した当日玄関をあけるとそこには取手付きの裁縫箱のようなアンティークな木製箱を携えた吉村さんが!ご本人も行商の様と仰ってましたが、まさに行商人。そんなこんなで無事友人へのプレゼントと自分用にも「タンポポ」「モミジバフウ」「カイガラソウ」の3個を購入させていただいた。その時いろんなお話をしたけれどどんな話をしたかは正直全く思い出せないのですが、ただ手作り感があり恥ずかしいなあと思っていた自宅をとても気に入って頂いたのはよく覚えていて、もちろん初対面なので社交辞令かなと思いつつとっても嬉しかったことは覚えています。
ほどなくして、近所に本店である「ミセとヤド」を完成され、レジ後ろのディスプレイ棚を一緒にDIYしたり、マジックミラーで合わせ鏡のギミックのある什器のお手伝いをしたり何かと楽しいことに誘って頂いた。その後も、お隣のカフェ、展示会ブース、遊具、東京店の空間デザインなどのプロジェクトでもお声掛け頂いた。
そんなこんなで10年以上たった今もたまにふとSola cubeを手に取ることがあります。そんなとき、オブジェクトとして持ったサイズ感と重さが絶妙に心地よいと感じることと、たいてい何も考えることなくまじまじとただただ観察しているのです。きっと老若男女問わず思わず見入ってしまう、まさしくSense of wonder。ふわふわしたタンポポの綿毛が気泡ひとつなく一見ただただ浮遊しているように見えるプロダクト。そこには製造、商品化への並々ならぬ努力と根性、そして何より自然の造形物への愛が透けて見える。鮮やかなアイデアとさぞたいへんだったであろう製作プロセスが相まった結晶としてのSola cubeが多くの人々を魅了しているのはとっても自然なことだと思います。
僕のSola cubeにまつわるごく私的な話でした。でも人生には誰しも不思議な出会い、縁ってあるよねって共感をもって読んでいただけたら幸いです。そしてそんな説明できない出会いや縁には、それぞれが日々真摯に向き合った何か結晶のようなものを心の中に持っていると誰しも起こりうることなのかもしれない、例えばSola cubeのような結晶を。
この記事に登場するキューブ
この記事を書いた人
村松英和 / デザイナー
京都を拠点にモノ、イエ、ミセ、そしてマチを作っています。 日常風景の機微を捉えられる(に触れられる)空間、物に惹かれます。
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